トランス脂肪酸が多い食品は?何が悪いの?アメリカで禁止された理由とバターvsマーガリンの真実

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トランス脂肪酸が多い食品は?何が悪いの?アメリカで禁止された理由とバターvsマーガリンの真実

毎朝のトースト、お昼の菓子パン、おやつのスナック菓子。私たちが何気なく口にしている食品の中には、”トランス脂肪酸”という成分が含まれていることをご存じでしょうか。
この成分は、心血管系への影響から世界的に注目されており、WHO(世界保健機関)は2023年時点で「総エネルギー摂取量の1%未満に抑えること」を推奨しています【WHO, 2023】。さらに、アメリカではFDA(米国食品医薬品局)が2015年に「部分水素添加油脂(PHO)」を食品添加物としての安全認定から除外し、段階的に使用を禁止する措置を取りました【FDA, 2015】。
それでは、なぜ日本国内では海外ほど厳しい規制がないのでしょうか?この記事では、トランス脂肪酸について「どんな食品に多く含まれているのか」「体への影響は何か」「各国での規制状況」「バターとマーガリンの比較」まで、幅広く整理してご紹介します。最後には、日常生活で無理なく取り入れられる代替案や選び方のコツもお伝えします。

トランス脂肪酸とは?なぜ体に影響があるのか

この章のポイント

  • トランス脂肪酸の定義と生成メカニズム
  • 健康への影響(LDLコレステロール・慢性炎症との関連)
  • 飽和脂肪酸との違い──”油の質”が重要な理由

トランス脂肪酸とは(英語:Trans Fatty Acid)
トランス脂肪酸とは、脂肪酸の分子構造における二重結合が「トランス型」と呼ばれる配置になった油脂のことを指します。自然界にも微量に存在しますが、多くは人工的に生成されます。具体的には、植物油を固形化するために行われる「部分水素添加」という加工プロセスや、高温での加熱調理によって発生することが知られています。マーガリンやショートニングといった加工油脂に多く含まれており、パン、揚げ菓子、クッキー、ケーキなど、身近な食品を通じて日常的に摂取しやすいのが特徴です。

健康への影響とは
複数の研究によると、トランス脂肪酸の摂取量が多い人は、心血管疾患や糖代謝に関わる健康リスクが上昇する傾向が報告されています【PubMed Central: PMC8535577】。
特に注目されているのが、LDL(悪玉)コレステロールを上昇させ、HDL(善玉)コレステロールを低下させるという、他の脂質にはあまり見られない二重の作用です。このため、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などのリスク要因として国際的に警戒されています。
一方で、牛や羊などの反芻動物由来の乳製品や肉に自然に含まれる微量のトランス脂肪酸(反芻由来トランス脂肪酸)については、人工的なものとは性質が異なり、健康への影響は限定的とされています。
つまり、「どの食品から、どれだけの量を摂取しているか」が、健康リスクを大きく左右するということです。

💡 選び方のヒント:放牧飼育のバターや無添加の植物油など、質にこだわった油脂を選ぶことで、日常の食生活をより安心なものにできます。

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トランス脂肪酸が多い食品ランキング

この章のポイント

  • 1位:マーガリン・ショートニング
  • 2位:揚げ物・スナック菓子・レンジポップコーン
  • 3位:冷凍パン・パイ・クリーム系スイーツ・インスタント麺

厚生労働省が公表している調査データによれば、日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量は、WHO推奨値(総エネルギー摂取量の1%未満)を下回っているとされています【厚労省, 2023】。
しかしながら、特定の食品群には高濃度に含まれるケースがあり、日常的にそれらを多く摂取する人は注意が必要です。以下、摂取源となりやすい代表的な食品を見ていきましょう。

1位:マーガリン・ショートニング

焼き菓子、パン、ケーキのクリームなどに広く使用されています。特に、部分水素添加油脂を含む製品が該当し、トランス脂肪酸の主な摂取源となっています。
見分け方のコツ:
原材料表示で「ショートニング」「加工油脂」「部分水素添加油脂」といった記載がある製品は避けるのが安心です。代わりに、放牧バターやオリーブオイルを使った製品を選ぶと、風味も豊かで健康面でもメリットがあります。

2位:揚げ物・スナック菓子・レンジポップコーン

外食チェーンやファストフード店で提供される揚げ物は、使用される油が繰り返し加熱されることが多く、その過程で油が酸化したり、トランス脂肪酸が生成されたりする可能性が指摘されています。
また、市販のレンジタイプのポップコーンも要注意です。風味を出すために「バター風味油」や「マーガリン系ショートニング」が使われていることが多く、トランス脂肪酸の摂取源になりやすい食品です。

家庭での工夫:
自宅で揚げ物をする際は、米油やオリーブオイルなど酸化に強い油を使い、できるだけ新しい油で調理することで安心感が高まります。
ポップコーンは、オリーブオイルや放牧バターで手作りするのがおすすめです。

  

3位:冷凍パン・パイ・クリーム系スイーツ・インスタント麺

冷凍食品や業務用に流通しているスイーツ類は、保存性を高めるために油脂が工夫されていることがあり、トランス脂肪酸を含む可能性があります。
さらに、レンジタイプのポップコーンや揚げ麺タイプのインスタントラーメンなども、意外なトランス脂肪酸の潜在源です。
特に「バター風味」「濃厚味」などの製品では、風味付け用油脂にショートニングやマーガリン系油脂が使われることがあります。
手作りポップコーンやノンフライタイプの麺を選ぶことで、風味を損なわずに健康的に楽しめます。

 

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「トランス脂肪酸ゼロ」表示の落とし穴

この章のポイント

  • 「0g」と表示されていても100%ゼロではない場合がある
  • アメリカで全面禁止された背景
  • 日本で規制が緩やかな理由

「0g」表示の仕組み
日本では、食品表示法に基づき「100gあたり0.3g未満であれば”0g”と表示できる」というルールがあります【消費者庁, 2022】。
つまり、パッケージに「トランス脂肪酸0g」と書かれていても、実際には微量に含まれている可能性があるということです。安心して選ぶためには、パッケージ表面の表示だけでなく、裏面の原材料欄にある「ショートニング」「加工油脂」といった記載をチェックする習慣が大切です。

アメリカではなぜ全面禁止されたのか
FDAが2015年に「部分水素添加油脂(PHO)」を「安全とは認められない(GRAS認定の撤回)」と発表しました【FDA, 2015】。その後、3年間の移行期間を経て、2018年に食品への使用が事実上禁止されました。
この政策の背景には、年間で数千人規模の心血管疾患による死亡を防ぐという公衆衛生上の目的があり、同時に医療費の削減という経済的メリットも期待されています。

日本ではなぜ”規制がゆるい”の?
日本国内では、国民全体の平均的な摂取量がWHO基準(総エネルギー摂取量の1%未満)を満たしているため、厚生労働省は「現時点では規制を強化する必要性は低い」と判断しています【厚労省, 2023】。
また、製菓・パン業界では自主的な削減努力が進んでおり、部分水素添加油脂を使用しない製品が増えています。
とはいえ、外食の頻度が高い方や、輸入食品を日常的に摂取する方は、自分の食生活を振り返ってみる価値があるでしょう。「ゼロ表示=完全にゼロではない」という認識を持つことが、安心への第一歩です。

 

バターとマーガリン、体に影響があるのはどっち?

この章のポイント

  • マーガリン──”植物性=ヘルシー”とは限らない
  • バター──自然由来でトランス脂肪酸はごくわずか
  • 結論──”少し高くても質の良い油”が最適解

マーガリンの特徴
マーガリンは植物油を原料として作られるため、一見すると「植物性=ヘルシー」というイメージを持たれがちです。しかし、製造過程で部分水素添加が行われている製品では、トランス脂肪酸が含まれる可能性があります。
近年では「トランス脂肪酸ゼロ」を謳う商品も増えていますが、前述の通り「ゼロ表示」でも微量に含まれることがあるため、表示だけでなく、原材料の中身をしっかり確認することが重要です。

バターの特徴
バターは牛乳から作られる乳脂肪由来の天然油脂で、自然に含まれるトランス脂肪酸はごくわずか(約3〜5%程度)とされています【Journal of Oleo Science, 2021】。
飽和脂肪酸の含有量は多めですが、特に「グラスフェッド(牧草飼育)」のバターは、オメガ3脂肪酸や共役リノール酸といった有用な成分も豊富に含まれており、バランスの良い油脂と評価されています。

結論:質の良い油を選ぶことが大切
「マーガリンが悪い、バターが良い」という単純な二元論ではなく、どのような製法で作られ、どんな成分が含まれているかを見極めることが大切です。
少し価格は高くなりますが、グラスフェッドバターや無添加のオリーブオイル、米油といった質の良い油脂を選ぶことで、毎日の食卓がより安心で豊かなものになります。

💡 選び方のヒント:放牧飼育のバターや無添加の植物油など、質にこだわった油脂を選ぶことで、日常の食生活をより安心なものにできます。

🧈 グラスフェッドバター & 植物油

💡 質にこだわる方へ:放牧飼育の牛からとれるグラスフェッドバターや、精製度が高く酸化しにくい植物油を選ぶことで、毎日の食卓がより健康的になります。

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トランス脂肪酸を減らす3つの生活習慣

この章のポイント

  • ① 家では「油を変える」だけでOK
  • ② パンやおやつは「原材料の短さ」で選ぶ
  • ③ 外食は”揚げ物を控えめに”で無理なく続ける

完璧を目指す必要はありません。まずは、日常生活の中で無理なくできることから始めてみましょう。

① 家では「油を変える」だけでOK

自宅で使う油を見直すだけで、摂取するトランス脂肪酸の量は大きく変わります。

  • 米油:加熱に強く、揚げ物や炒め物に最適
  • エクストラバージンオリーブオイル:サラダや仕上げの風味付けに
  • 放牧バター:トーストやお菓子作りに

これらの油は、トランス脂肪酸をほとんど含まず、酸化にも強いため、毎日の調理に安心して使えます。

🍳 毎日の料理に:風味が良く、健康面でも安心な米油やオリーブオイルは、家庭の定番油としておすすめです。

② パンやおやつは「原材料の短さ」で選ぶ

「無添加」と書かれているかどうかよりも、原材料欄がシンプルで短いかどうかに注目してみてください。

  • ショートニング
  • 加工油脂
  • 部分水素添加油脂

これらが入っていないパンやお菓子を選ぶことで、自然とトランス脂肪酸の摂取量を減らすことができます。Oisixやコープ自然派など、無添加や素材にこだわったブランドでは、家庭向けの安心できる商品ラインナップが揃っています。

🍪 子どものおやつにも:
シンプルな材料で作られた無添加おやつは、安心して家族に食べてもらえます。
ショートニングや加工油脂を使わないお菓子を選ぶことで、自然な甘さと安心感を両立できます。

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③ 外食は”揚げ物を控えめに”で無理なく続ける

外食を完全にやめる必要はありません。揚げ物の頻度を少し減らすだけでも、十分に効果があります。

  • フライドポテトや唐揚げを週2回→週1回に
  • サイズをLサイズからMサイズに変更
  • 揚げ物の代わりに、焼き物や蒸し料理を選ぶ

こうした小さな変化の積み重ねが、長期的な健康維持につながります。

🌿 朝ごはんから見直す:腸にやさしく、体に負担の少ない朝食レシピもぜひ参考にしてみてください。
→ 腸にやさしい朝ごはんレシピ|(工事中)

まとめ──完璧より”できることから”始めよう

トランス脂肪酸は、「少量であっても、その質が問題になる」と言われています。
しかし、すべてを一度に変える必要はありません。まずは以下の3つを見直すだけでも、十分な効果が期待できます。

  • 朝のトーストに塗る油
  • 家庭で使う調理油
  • 買い置きしているおやつやパン

完璧を目指すより、できることから少しずつ。今日の買い物リストを少し変えるだけで、家族の健康を守る第一歩になります🌿

この記事のまとめ

  • WHO基準では「総摂取エネルギーの1%未満」が推奨ライン
  • アメリカはFDAが部分水素添加油脂(PHO)を禁止、日本は自主削減が進行中
  • 「ゼロ表示」でも微量に含まれる可能性があるため、原材料表示の確認が重要
  • 質の良い油(グラスフェッドバター、オリーブオイル、米油など)への置き換えが効果的
  • 家の油・おやつ・外食の3点を見直すだけで、無理なく継続できる

出典・参考文献

  • WHO. REPLACE Trans Fat Initiative. 2023.
  • FDA. Final Determination Regarding Partially Hydrogenated Oils. 2015.
  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
  • PubMed Central: Association of trans fatty acid intake with coronary heart disease. PMC8535577
  • Journal of Oleo Science, 2021, Vol. 70 No. 4 pp. 467-476

🩵 免責事項

本記事は一般的な健康情報や食品選択の参考として作成されたものであり、特定の疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安がある方や、持病をお持ちの方は、医師または管理栄養士にご相談ください。

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